熊本地震から1か月が経過しましたが、まだ地震は続き「活発な状態」だといい、交通インフラや農林水産業の経済損失は5千億円規模で、建物損壊は8万棟を超えた。避難所などで暮らす被災者はなお1万人以上に上るとのことです。
4月14日夜、最大震度7を観測したマグニチュード(M)6.5の地震に続き、4月16日午前1時半には震度7・マグニチュード(M)7.3の大地震が発生したことは周知のことであります。
同じ震度7でマグニチュードが6.5→7.3なので、14日より16日の地震のほうが大きい地震だったのだな、とくらいにしか考えていなかった私ですが、5月16日付日本経済新聞の特集記事「『真迫』 震度7 連鎖の衝撃気象庁の敗北宣言」を読み、数値だけで理解していた自分の浅はかさに改めて反省をさせられました。
まず「震度」についてです。
1996年(平成8年)4月1日に気象庁の「震度階級」が改定され、「震度0」から「震度7」まで10段階となっています。このことは、阪神大震災後の改定であり、記憶にあったことでした。
震度7が最高の震度であることは頭の中で理解はしていても、「まだ上」がありそうに感じていたのも事実です。
震度計で6.5以上を観測した地震はすべて「震度7」となり、その上はないのです。通常の10進法的な感覚から言えば、「震度10」ということなのです。
身体で感じない程度の「震度0」から始まり、「震度5弱」と「震度5強」、「震度6弱」と「震度6強」という区分が設けられているために、「震度7」が最高の震度の表現になっているのです。
そしてマグニチュードです。
14日は6.5で16日は7.3.数字だけで言えば、7.5 ÷ 6.5 = 1.123・・・・ですが、エネルギーの大きさで言うと7.3(M)は6.5(M)の約16倍のエネルギーだと言うのです。
「14日のM6.5の地震について気象庁は当初、最大規模の本震後に余震が続き、収束していく一般的な「本震―余震型」と考えていた。同庁が余震確率算出に使うマニュアルには「(最初の地震が)M6.4以上なら本震とみる」とある。過去の内陸直下型地震のデータでは、その規模の発生後にそれ以上の地震が起きたことはないからだ。」(2016.5.16日経新聞)とある。
まさに「想定外」のことが(またもや)起こったのです。
少しこじつけですが、経済の話に絡めて、続けて書いていきます。
「今は、何が起きるか分からないVUCA(ブーカ)の時代だ」といわれています。
2008年のリーマンショック以降、経済学の世界では、「もともと世界はVUCAだった」との考え方も注目を浴びるようになっている。
VUCA(ブーカ)とは、
Volatility(変動)、
Uncertainty(不確実)、
Complexity(複雑)、
Ambiguity(曖昧)
の4つの単語の頭文字から作った造語です。
1990年代に米国で生まれた軍事用語とのことですが、
2010年代に入り「解析不能な経営環境を示す言葉」としても流行し始めました。
今年1月下旬に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)でも、「VUCAワールド」という言葉が飛び交ったようです。
確かに2016年も、ベルギー・ブリュッセル空港の大規模テロからパナマ文書漏洩まで、世界では想定外の出来事が起こり続けています。
経済学者の多くは長らく「世界で起きる現象は正規分布に基づいて発生する」と考えてきました。
正規分布の世界では、平均に近い現象ほど発生頻度が高く、遠い現象は発生頻度が低い。平均から離れれば離れるほど出現頻度は下がり、発生確率はゼロに近づいていきます。
つまり、世界が正規分布で動いているなら、“起きそうなことは起こり、“起きそうにないこと”はなかなか起きない。
1924年生まれのユダヤ人数学者、ブノア・マンデルブロが長年の研究の末、完成させた新たな統計モデルの下では、正規分布を前提とする世界ではなかなか起きなかったことが、想像を上回る頻度で起きるということです。
シャープの高橋社長も記者会見でたびたび「想定外」と言う言葉を使っていました。
このようなVUCAな時代に、経営者はどう対応していったらいいのでしょうか?
「VUCAの時代では、入念にシミュレーションしても想定を超える事態が次々と発生してしまう。ではどうすればいいのか。
その最大の対応策が、「スピード経営」だ。めまぐるしく変わったり、予期せぬことが起きたりすれば、この変化の早さに合わせ経営判断をしていけばいい。
シャープも、「今日受注をとっても、明日は失注する」といわれる巨大な中国スマホ経済圏の変化のスピードに合わせ、社内の営業や開発体制を変えていく必要があった。スピード経営ができていれば、もし即断即決で動いて失敗しても、「朝令暮改」ですぐに撤退すれば会社が負う傷はすくない。
VUCA時代では検討に検討を重ねている時間はない。時代は刻々と変化し、また新たな不測の事態が起きているのだから。」(日経ビジネス2016.5.9号 斉藤美穂記者)