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キャッシュレス決済に係る決済手数料の消費税

キャッシュレス決済に係る決済手数料の消費税の課否判断は非常に複雑です。

クレジットカード決済に係る決済手数料については
国税庁サイトで公表されている質疑応答事例集があります。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/02.htm
この事例は、加盟店が信販会社に対して商品代金という『金銭債権』を譲渡し、
譲渡代金を受取っているケースです。
このような場合の決済手数料は、金銭債権の譲渡ということで、
消費税は非課税として取扱われます。

気をつけていただきたいのは、加盟店が信販会社と直接契約ではなく、
決済代行会社を通しているケースです。
このような場合には、決済代行会社に対して『金銭債権』を譲渡しているわけではないので、
決済代行会社に支払う決済手数料に係る消費税は課税として捉えられます。

また、この他『金銭債権』を譲渡しないケースが存在します。
いわゆる“チャージ”方式のキャッシュレス決済手段を用いた場合の決済手数料です。
こちらも、消費税が“課税”になります。
代表的な決済手段ですと、交通系電子マネー、
LINE Pay、Alipay、WeChat Pay、d払いなど
です。

以上をまとめると、次のとおりです。

決済手数料に係る消費税が
『非課税』となる決済手段
決済手数料に係る消費税が
『課税』となる決済手段
  • クレジットカード
  • QUICPay
  • iD
  • など(ただし、契約先が決済代行会社の場合には、課税)
  • 交通系電子マネー
  • LINE Pay
  • Alipay
  • WeChat Pay
  • d払い
  • 楽天Edy
  • nanaco
  • WAON
  • 左の非課税となっている決済手段のうち、契約先が決済代行会社のケース
  • など

 

税理士業務改善セミナーで講師をしました

10月17日に開催されました日本デジタル研究所(JDL)の
「私が実践した業務改善とその成果」
という、JDL展示会のセミナーで、
我が事務所の取り組みを発表させていただきました。

 

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講師を引き受けた最大の理由は、
税理士事務所の置かれている環境が急激に変化していること
への危機感と税理士事務所の進むべき方向を伝えたかったからです。

 

経済取引が「電子化」に大きく移行しています。

税理士事務所のクライアントの売上先や銀行との取引は、
電子で行われている(電子データで入手可能)であるのに、
クライアントの取引データをプリントアウトしてもらい、
郵送(宅急便)で送付を受け、会計システムに手入力し、帳簿を作成している。
そんな事務所が多く存在しているのが現状です。

そのなか、JDLも少しずつではありますが、
いわゆる「フィンテック(Fintec)」への対応がされてはいます。

記帳代行中心の事務はどんどん省力化され、AI(人工知能)の活用により、
ほとんど自動化される日は近いと思います。

そのため、今までの会計や税務知識はもちろんのこと、
ITリテラシーが必要になってきます。

ITリテラシー:(情報機器やネットワークを利用し
集めた情報を自分の目的に沿きる能力)

つまり、

・情報収集や情報評価
・情報発信
・情報処理に関する総合的な知識に関する能力

 を高めることで、
会計データを活用した経営サポートをすること。

これが、これから税理士事務所が生き延びるポイントで、
私がこのセミナーで伝えたかったことです。

 

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日本デジタル研究所のセミナーで事務所の実践事例を発表します

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「実践者が語る、業務改善 成果発表会『私が実践した業務改善とその成果』」と題し、新たな企画として、Entry Innovation(記帳業務革新)に取り組む税理士ご自身より、業務改善の成果をご紹介いただきます。
加えて、今回初披露となる業務改善事例も数多くご紹介いたします。
 リンクはこちら

 10月17日(火)に開催されます「JDL ENTRY INOVATION 2017」に、スピーカーとして当方事務所の実践事例を発表します。
これまでコンピュータやネットビジネス、クラウドなどの実践で得た知識を、税理士事務所の事務改善に少しは繋げられているのかなと思っており、その一部を発表させていただきます。

日 時   平成29年10月17日(火) 10:00開始予定(約45分の予定
場 所   ホテルグランビア大阪 20階 鳳凰の間

世の中は大きく変化し、特に、「IT」・「AI」と言った分野の進化は大きく、私ども税理士事務所の事務の大きなウエイトを占めている「記帳事務」が、AIに置き換わっていく確率が高いとの研究データがあります。
そういった「疑問」を数年前から持ち、税理士実務の中で試行錯誤し実践してきました。
IT環境が日々変化するなか、「ちょっと変わった税理士がこんなことを考えている」程度のものですが、今回その内容を発表させていただき、皆様のご意見も頂戴したいと思っております。

20171011JDL改善事例

20171011JDL改善事例スケジュール

「正直者には、尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」 (気になるphrase24)

「正直者には、尊敬の的、悪徳者には畏怖の的」

これは、1949年(昭和24年)6月10日に、東京・工業クラブで開催された「国税庁開庁式」において、ハロルド・モス氏が挨拶されたなかの有名な一文である。

所得税の申告納税制度導入の初年度に当たり、税収不足がはっきりしていた昭和22年11月、マッカーサー連合国最高司令官は、アメリカ合衆国内国歳入庁(日本の国税庁に相当)に対し、日本の税制・税務行政への助言のための適切な人材としてハロルド・モス(Harold J.Moss)氏を日本に派遣するように依頼しました。
モス氏は、昭和23年に来日後、総司令部機構の内部に日本の税制・税務行政を専轄する内国歳入課を創設し、日本の税務行政組織に関して改革を支指示し、そして、日本の税制の抜本的な改正のために、「シャウプ勧告」で著名なシャウプ博士を招聘することを企画したのです。
マッカーサーがモス氏を名指しで招聘したのには理由があったのです。
マッカーサーはフィリッピン時代にモス氏と個人的な接触を得ていました。以前に個人的な会話を交わしたときに、マッカーサーは、モス氏の優れた理論的・実務的識見に印象を受け、日本の税務行政改革のために助力するように依頼したのでした。

今の日本の税制の源流にハロルド・モス氏という大きな存在があったのです。

ハロルド・モス氏の挨拶で、彼は言います。
「個々の納税者の間に最大の公平を確立するためには、3つのことが欠くべからざる要件であります。
① その1は、税法と税率が、理論的に人々の間に租税負担を公正にに且つ公平に分配するものでなければならないということであります。
② その2は、納税者の側からの高度の協力ということであります。
③ その3は、政府の税法を確実に、しかしながら公平に施行し励行するための強力にして、能率的且つ誠実なる専門的行政機関がなければならないということであります。」

まさに的を射た言葉であります。

平成3年当時、大蔵省がモス氏を日本に招待し大阪に立ち寄られたときに、大阪国税局の企画課の担当係長としてアテンドさせていただいた時のことをふと思い出しましたので、おもいつくまま書いてみました。

モス氏

「知らないと損する税金の話」で講演会を実施します

11月14日(土)13:30から15:30の2時間、清水谷高等学校の同窓会館「濟美館」におきまして、「清友会」(清水谷高等学校同窓会)主催の講演会で講演をさせていただきます。

2015年10月16日08時29分45秒

テーマは、表題のとおり「知らないと損する税金の話」で、今ホットな話題であります「マイナンバー制度」
平成27年1月(以降発生した相続)から課税が強化(増税)された「相続税」についてお話をします。

「マイナンバー制度」や「相続税」につきましては、新聞や雑誌、テレビのワイドショーなどでも頻繁に取り上げられ、また、銀行、信託銀行、証券会社などなどが「相続税対策セミナー」を開催して、百家争鳴の状況です。

それぞれが言っておられることには間違いはないのですが、部分的に(説明している主催者側に有利なように)説明されおり、聞かれた方は結局どうしたらいいのかわからない、というのが現状ではないでしょうか。

そこで、難しいテクニック(難しく言うと「節税スキーム」)を使うことなく、基本的なこと整理して理解し、当たり前のことをすれば節税になる、という話をしたいと思っています。

「節税」というより、払わなくていい税金を払わなくていいようにするために頭の整理をしていただけるような話をさせていただきたいと思っています。

ここで話はそれますが、講演会の会場となっている清水谷高等学校の敷地についてふれてみたいとおもいます。

今、NHK朝の連続テレビ小説で放送中の「あさが来た」についてですが、主役のモデルとなっている「広岡浅子」氏は、日本で始めての女子大学校(東京にある日本女子大学)の創立に尽力をされたのですが、元々は大阪の地に作るべく、大学設置用地として確保されていたのが、わが母校「清水谷高等学校」の地なのです。

大学設立のための資金が大阪で集められなかった関係で、asagakita東京で設立されることになり、大阪で確保されていた場所は、「府立高等女学校」設立の時期でもあり、「大阪府立第一高等女学校」としての開校が認可され、1901年4月28日の「大阪府立清水谷高等女学校」として開された経緯をもっています。

明治40年に5周年記念事業として建てられた同窓会館「濟美館」所蔵の書額は、当時の大村校長が日本女子大学の成瀬仁蔵を通じて西園寺公望公に揮毫を依頼したモノです。また、『濟美』は、教育勅語の「世世美厥濟」(世世にわたって立派な行いをしてきた)に由来しているとのことです。

講演会、多くの皆様のお越しをお待ちしております。

「マイナンバー」の収集・保管はどうしたらいいの?

TVのCM「勘定奉行にお任せあれ!」でおなじみの、「㈱オービック」の「マイナンバーセミナー」に参加し、情報収集してきました。
給与事務や経理事務を行っていくなかで、現在各企業様がご利用されているシステムがマイナンバー制度にどう対応されていくのか、非常に関心をもっていました。

今回のセミナーは、従業員に対しマイナンバーが10月には通知され、年末調整事務から実際の実務で取り扱っていかなければならないために、もう準備を始めておかなければ間に合わない時期にきているのではないかと思っています。そういった状況のなかで、ひとつの解決策を示してくれました。

ポイントは、通常の給与人事事務とマイナンバーの収集保管等事務の関係です。

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従業員や取引先かマイナンバーを「収集」し、「保管」管理し、「廃棄」をするかということについては、法令上の規定があり、個人情報に結びつくものであるために、厳格な管理が求められています。もし、企業で保管しているマイナンバーが漏えいしてしまったら、企業が受けるダメージは計り知れません。

そこで昨日のセミナーで説明があった「マイナンバー対応チェック項目」を掲載します

取得に当たってのチェック項目
・ どのように取得するのか? ( 口 システム  口  対面もしくは郵送 )
・ どこで取得するのか     ( 口 本部  口 拠点 )
・ 取得担当者は ?       ( 口 本部の人事担当者  口 各責任者  )
・ 誰でも、いつでも同じ手順で収集し、本人確認できる ( 口 同じ手順でできる )
・ 個人番号の取得状況を簡単に確認できる      ( 口 簡単に確認できる 口 残せる )
・ 個人番号の取得、本人確認の履歴を残せる     ( 口 残せる )
・ 従業員が個人番号を入力して収集できる仕組みがある ( 口 収集できる仕組みがある)
・ 非正規社員からの個人番号収集をしやすい仕組みがある
                                                                                           ( 口 収集しやすい仕組みがある)
・ 個人番号と本人確認書類を収集できる仕組みがある  ( 口 収集できる仕組みがある )
・ 番号取得時の書類等は点在 しない             ( 口 点在しない )

保管に当たってのチェック項目
・ 個人番号をどこに保管するのか?             ( 口 保管場所〔           〕 )
・  どのように保管するのか?
               ( ロ システム等のデー タベー  ス  口 Excel等のファイル  口 書類  口 その他)
・  セキュリティの高い状態で個人番号を保管できる ( 口 保管できる )
・  個人番号は関係者以外、見ることができない   ( 口 できない )
・  個人番号の保管記録を残せる   ( 口 残せる )
・  維がいつ、誰の番号を照会 したのか検索できる  ( 口 検索できる )

利用・提供・廃棄に当たってのチェック項目
・ システムから帳票を出力する場合、個人番号出力に対応するのか
 (口 対応予定  口 未対応 口 一部未対応(                           )  口 不明)
・ 手作業で作成している帳票があるのか⇒ある易合、対応をどうするのか?
    ( 口 ない  口 ある 口 引き続き手作業で作成  口 システムからの出力を検討 )
・ 社会保障と税の関連する帳票しか利用できない仕組みがある ( 口 仕組みがある )
・ 同じ帳票でも利用目的に応じて個人番号記載の有無を変更できる   ( 口 変更できる )
・ 特定の担当者しか個人番号を取り扱えない ( 口 取り及えない )
・ 個人番号の利用状況を記録に残せる ( 口 残せる )
・ 保管の必要が無くなった個人番号(退職者 ・扶養から外れた家族)がわかる
( 口 わかる )
・ 個人番号の廃棄記録を残せる  ( 口 残せる )
・ 個人番号が記載されている書類の保管は、廃棄を前提 とした仕組みである
 ( 口 廃棄を前提としている )

安全管理についてのチェック項目
・ 組線体制や社内ルールが整備されているのか? ( 口 整備されている )
・ 個人番号を取り扱うシステムに対してアクセス制御できる ( 口 アクセス制御できる )
・ 個人番号を取り扱うシステムに対するアクセス者の識別と認証ができる ( 口 識別と認証ができる )
・ 暗号化等の方法により、デー タの機密性を確保している ( ロ 確保している )

 マイナンバーへの準備の状況はいかがでしょうか?

 

領収書の保管場所で困っていませんか?

財務省が2016年中にも企業の保管義務を緩める検討に入ったとの報道(日経新聞4月28日夕刊トップ記事)がありました。

領収書をスマートフォン(スマホ)やデジタルカメラで撮影して画像データを保管すれば、原本の廃棄を認める方向での検討がされています。

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財務省は不正の防止策を経済界と詰めたうえで、今秋にも16年度の税制改正を決める与党の税制調査会に提案。平成28年中の省令改正をめざしているとのことです。

経団連によると、国内企業が領収書などの税務書類を保管する費用は年間3千億円に上っているそうで、今回の制度見直しが実現すれば大幅な経費の削減が見込まれ、企業の競争力向上にも役立とみられています。

この制度改正。大いに関心のあることで、ウォッチしていきたいとおもっています。

マイナンバー制度開始前に事業者が進めるべき対応

4月3日に公布された番号の施行期日を定める政令により,今年10月5日から個人番号と法人番号が付番・通知され,来年1月1日から税や社会保障の分野で番号の利用が始まります。
番号制度導入のスケジュールはおおよそ次のとおりです。
27.10.5~ 通知カードによる個人番号の通知,法人番号の通知・公表
28.1.1  番号の利用開始,個人番号カードの交付開始
特定個人情報保護委員会が個人情報保護委員会に改組
29.1    マイ・ポータル(仮称)の利用開始
国の機関間の情報提供ネットワークシステムの連携開始
29. 7    地方公共団体と情報提供ネットワークシステムの連携開始
30.1    金融機関に個人番号の検索を義務付け(預金者側の記載は任意)

マイナンバー制度に関する法令,個人情報保護ガイドライン,個人番号及び法人番号に関する資料は,内閣官房をはじめ,特定個人情報保護委員会や国税庁,総務省,厚生労働省の各ホームページにある番号制度の「アイコン」をクリックすると,関係する法令や指針,Q&Aなど関係資料がずらり並んでいます。

様々な資料の中でも,事業者が必ず目を通しておきたいのが「内閣官房・内閣府・特定個人情報保護委員会・総務省・国税庁・厚生労働省 事業者向けマイナンバー広報資料『マイナンバー 社会保障・税番号制度~民間事業者の対応』(平成27年2月)」と『特定個人情報保護委員会『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)です。

前者の事業者向けマイナンバー広報資料は,マイナンバー制度の法令や資料が一覧できる内閣官房HPの「マイナンバー 社会保障・税番号制度」のサイトから閲覧できます。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/pdf/j_koho_h2702.pdf
マイナンバー制度全体の概要について図表を用いて分かりやすく説明されており,法令等の新情報を追加するなど随時更新されています。制度の全体像を知るには最適といえます。

後者のガイドライン(事業者編)は,すべての事業者が個人番号を含んだ特定個人情報の適正な取扱いを確保するための具体的な実務指針となります。
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/261211guideline2.pdf
いきなり特定個人情報保護ガイドライン(事業者編)だと難しく感じる場合には,先にガイドラインに関するQ&Ahttp://www.ppc.go.jp/legal/policy/faq/から目を通してみることをおすすめします。

番号法では,個人情報保護法よりも厳しい罰則規定が設けられていますので,すべての事業者にとって「知らなかった」では済まされないので必ず理解しておく必要があります。

銀行預金は相続財産であるが遺産分割の対象ではない (相続税の勘所2)

今週、枚方税理士研究会の研修からの話題です。

今回は、相続税に入る前の、民法の話です。

亡くなられた被相続人の相続財産には、現金や銀行預金、土地建物などがあります。
これら相続財産は、当然遺産分割の対象だと私は思っていました。

でも、違ったのです。

銀行預金は、相続財産ではありますが、「法定相続分で当然分割されるるため、遺産分割の対象ではない」との最高裁判決(昭和30年5月31日)が出ているのです。

ただ、実務上(朝廷・審判)は、相続人全員の同意を得て遺産分割の対象としているのが現状です。
ただ、相続人の一人でもこれに明確に反対すれば、遺産分割の対象から外れ、法定相続分での相続となるわけです。
また、裁判になれば、不動産や証券などの遺産は、裁判所が各種の事情を考慮して、誰に何を相続させるかということまで取り決めますが、ここで預金と他の相続財産は扱いが異なり、裁判官は、各相続人が当然に、法定相続分に応じた預金払戻請求権を分割取得するという立場をとります。

また、銀行側の事情もあります。

相続人が故人の預金を払い戻そうとする場合には、銀行は、通常相続人全員で払戻用の書類に署名押印することを求めてきます。

銀行の側からすると、個々の相続人からの払い戻し請求に応じてしまうと、あとで他の相続人から既に払戻した部分まで二重に請求をされたり、双方の主張に巻き込まれて混乱する危険性が無いとは言えませんから、それを理由に全員の署名と実印を要求してくるわけです。

相続対策を考える上で、少し考えておきたい知識でした

※ このコラムは、黒瀬j法律事務所 弁護士黒瀬英昭先生の研修「相続・遺言・事業承継実務 ~弁護士の活用法~」の内容の一部を私なりに取りまとめたものです。
黒瀬法律事務所のホームページはhttp://www.kuroselaw.com/です。

「代表者借入金」の恐ろしさ (相続税の勘所 その1)

昨日、近畿税理士会東支部の研修を受けてきました。
その研修内容からの話題です。

会社の資金繰りが苦しくなると、社長が会社にお金を貸し付けることがよくあります。

また、資金繰りの関係で、社長への給料を一部未払いにしていると、これも、会社にお金を貸し付けたことと同じです。

会社からみるとまさに「借入金」です。

資金繰りが改善して、「借入金」を返済できたらいいのですが、
低調な業績続くと、会社からの返済が進まずに、代表者からの借入金がどんどん増えていってしまいます。

代表者借入金を返済できずに、増加し続け、数千万円にも達している会社も結構あります。

ここで問題となるのは、この状態で社長が亡くなった場合です。
代表者からみると、会社に対する貸付金となりますので、
この「貸付金」は、「財産」で、相続税の対象となってしまうことです。

たとえば社長から会社への貸付金が3,000万円あって、
相続税の税率が30%に達していれば、
900万円(3,000万円×30%)もの、相続税を支払うことになります。
会社の業績が回復し、貸付金を返済できる状況があれば、返済金で徐々にでも相続税を支払うこともできますが、
長期間業績不振を続けてきた会社は、代表者が変わっても業績が回復せず、相続税の納税資金を工面するのにも苦労することになります。

財産評価基本通達で、これら「貸付金債権等」は、
原則として「元本の価額」と「利息の価額」とされています。
例外として、その会社が相続時点で、
●振り出した手形が不渡りとなったこと
●民事再生法の決定があったこと
●破産の宣告があったこと
●重大な損失を受けて事業廃止または6ヵ月以上休業
などと厳しい状態になっているなどの時に限って
「評価額をゼロにする」などの例外的な扱いをすることができます。

しかし、会社が事業を継続している限り、
例えば、先代社長が亡くなって、息子さんが代表者を引き継いでいる場合は、「貸付金」+「未収利息」の額面で相続税が掛ってしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか?

代表者が亡くなってからでは遅いのです!事前の対策が必要です。

一番簡単な対策は、会社への貸付金について「債権放棄」をすることです。
その分の貸付金が少なくなり、将来払う相続税が節税になります。
注意すべきは、会社側で「収益」を計上する必要があるということです。
会社では、税務上「債務免除益」を計上することになります。
繰越欠損金が多額で、代表者の「貸付金」等の額と見合う金額であれば、
効果的な方法と言えるでしょう。

それでは、繰越欠損金の額が「代表者貸付金」の額と見合わない場合はどうすればいいのでしょうか?

会社を解散させ、新たに会社を設立するという技があります。
でも、先代社長の相続が発生してからでは遅いのです!

決算書の「代表者借入金」が相当額あり、
返済できる状況にないなら、
早めの対策が必要です!