「代表者借入金」の恐ろしさ (相続税の勘所 その1)

昨日、近畿税理士会東支部の研修を受けてきました。
その研修内容からの話題です。

会社の資金繰りが苦しくなると、社長が会社にお金を貸し付けることがよくあります。

また、資金繰りの関係で、社長への給料を一部未払いにしていると、これも、会社にお金を貸し付けたことと同じです。

会社からみるとまさに「借入金」です。

資金繰りが改善して、「借入金」を返済できたらいいのですが、
低調な業績続くと、会社からの返済が進まずに、代表者からの借入金がどんどん増えていってしまいます。

代表者借入金を返済できずに、増加し続け、数千万円にも達している会社も結構あります。

ここで問題となるのは、この状態で社長が亡くなった場合です。
代表者からみると、会社に対する貸付金となりますので、
この「貸付金」は、「財産」で、相続税の対象となってしまうことです。

たとえば社長から会社への貸付金が3,000万円あって、
相続税の税率が30%に達していれば、
900万円(3,000万円×30%)もの、相続税を支払うことになります。
会社の業績が回復し、貸付金を返済できる状況があれば、返済金で徐々にでも相続税を支払うこともできますが、
長期間業績不振を続けてきた会社は、代表者が変わっても業績が回復せず、相続税の納税資金を工面するのにも苦労することになります。

財産評価基本通達で、これら「貸付金債権等」は、
原則として「元本の価額」と「利息の価額」とされています。
例外として、その会社が相続時点で、
●振り出した手形が不渡りとなったこと
●民事再生法の決定があったこと
●破産の宣告があったこと
●重大な損失を受けて事業廃止または6ヵ月以上休業
などと厳しい状態になっているなどの時に限って
「評価額をゼロにする」などの例外的な扱いをすることができます。

しかし、会社が事業を継続している限り、
例えば、先代社長が亡くなって、息子さんが代表者を引き継いでいる場合は、「貸付金」+「未収利息」の額面で相続税が掛ってしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか?

代表者が亡くなってからでは遅いのです!事前の対策が必要です。

一番簡単な対策は、会社への貸付金について「債権放棄」をすることです。
その分の貸付金が少なくなり、将来払う相続税が節税になります。
注意すべきは、会社側で「収益」を計上する必要があるということです。
会社では、税務上「債務免除益」を計上することになります。
繰越欠損金が多額で、代表者の「貸付金」等の額と見合う金額であれば、
効果的な方法と言えるでしょう。

それでは、繰越欠損金の額が「代表者貸付金」の額と見合わない場合はどうすればいいのでしょうか?

会社を解散させ、新たに会社を設立するという技があります。
でも、先代社長の相続が発生してからでは遅いのです!

決算書の「代表者借入金」が相当額あり、
返済できる状況にないなら、
早めの対策が必要です!

 

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