2018年1月27日、近畿税理士政治連盟主催の講演会で、宮澤洋一税制調査会長の講演を聴きました。
私が注目して是非聴きたかったのが、「平成30年度税制改正大綱」で明らかにされた「事業承継税制」の改正事項です。
宮澤税調会長の言葉から、「事業承継税制」の税制改正に対する並々ならぬ意気込みを感じました。
宮澤会長が、経済産業大臣の頃から、日本の中小企業の事業承継に危機感を持たれ、色々と動かれていた経緯があっての今回の改正に繋がっているのです。
大胆と思われる改正事項で、税制改正大綱が発表された時は「まだまだ使いづらい」制度でそんなに変わるのかどうか疑問に思っていましたが、今回の改正にかける話をお聞きし、本物かなと思いました。
宮澤会長の発言要旨は次のとおりです。
「経産大臣の頃から、日本の経済を支えているのは(韓国など海外と違って)中小企業であり、中小企業がどう変わるかが大事であると思っていた。しかし、中小企業には、人材があるのに後継者がいないことに危機感を持っていた。」
「2017年7月に中小企業庁長官に大胆なもの(税制改正要望)を作れと指示をした。」
「2017年の夏、経産省のメンバーと暑気払い(?)の飲み会を居酒屋でしていた時に、ちょうど居合わせた財務省主税局のメンバーと合流し、事業承継税制変革について議論をかわし思いを伝えた。」
「主税局の担当企画官が、主税畑の人でなかったために、大胆な改革ができた。」
「今回の事業承継税制の改正は、
・ 少々の目こぼしをしても大胆な変化を与える。
・ 細かいことを言って使い勝手が悪くなるのを避ける。
・ 10年限定だから出来た。この10年で徹底的にやる。
・ 使い勝手のいい税制になったので積極的に使っていただきたい。
・ 「世代交代税制」と言っている。」
その後、「週刊税務通信」1月29日号に、
『速報 中企庁財務課の担当官に聞く~新・事業承継税制の適用について~』という記事が掲載されて、実務的にも使い勝手を考慮していくことが明らかにされています。
【編集部】 ここからは少し具体的なお話を伺います。先ほども新制度の適用を受けるに当たっては,計画書の提出が必要という話が出ましたが,この計画書にはどういったことを記載するのでしょうか。
【山本】(中小企業庁事業環境部財務課課長補佐)】
計画書には、先代経営者や後継者の氏名,事業承継前後の事業計画やその事業計画に対する認定経営革新等支援機関の所見などを記載していただきます。計画書はあくまで早期の事業承継を促すためのものですので,しっかりと事業実態がある企業であれば,問題なく記載できるものを検討しております。
【北澤】(中小企業庁事業環境部財務課税制専門官)
認定経営革新等支援機関が事業計画をチェックし所見を記載する際には,その機関からより詳細な資料を求められることがあるでしょうが,都道府県庁へ計画書を提出する際に別途資料の提出を求めるといったことは,現時点では想定していません。ただし,計画書の記載が不十分な場合などにおいては,承継計画が十分なものかどうかなどを判断するために,資料の提出を求めることはあり得ます。
「使い勝手をよくする」との言葉が先行していますが、これまでの使い勝手の悪さを思い起こしますと、これからの運用手続きで「本当に」使い勝手のいい制度にしていただきたと思います。