アンドロイドは人間になれるか ( 気になるphrase21 )

少し前になるが、大阪大学大学院基礎工学研究科システム工学創成専攻特任教授である「石黒浩」氏の講演を聴く機会があった。

「枚方産官学連携フォーラム」(2015.11.28)の基調講演「ロボットと未来社会」である。

私自身、ロボットといえば、小さい頃は「鉄腕アp0905_1トム」や「鉄人28号」という人型で人類のために悪と戦うイメージであったが、最近では、工場でずらりと並ぶ産業ロボットが目に浮かぶ。

忘れもしないのが、税務大学校の研修時に見学に行った今は無き日産自動車の村山工場である。
工場のラインといえば、同じ製品を連続して作っているものと思い込んでいた私には、スカイライン他数車種が、それも頃なる排気量でしかも右左ハンドル混在で清算されているのを見たときに、コンピュータとロボットの威力に衝撃をうけたものである。

話は元に戻り、石黒教授の研究しているのが、「アンドロイド」型ロボットと「テレノイド」型ロボットである。

「アンドロイド型ロボット」で著名なのが、「マツコロイド」である。
「アンドロイド」は、見かけが人間そっくり、ただし中身は機械の「人間酷似型」のもの、つまりmatsuko_20150402-400x300見かけだけだと人間かどうか区別がつきにくいものを指す。(石黒浩「アンドロイドは人間になれるか」文芸新書)

アンドロイドは、見た目や動作の「人間らしさ」が一定以上になると、「人間には似ているけれど、何か違う」という違和感が生じ、人に嫌悪感を与えていまうようである。(これをロボット工学者の森正弘教授は「不気味の谷」とよんでいる。(同書)

 

これらと異なった概念で研究されているのが、「テレノイド」といわれているロボットである。

石黒教授は、「僕が作ったロボットで、もっとも『気持ち悪い』といわれている」と述べているが、教授は、これを高齢者の抱かせて実験を行った。(周りのスタッフの文句を抑えて、暴力的に進めた。)img_30899dfb105d07203ee3ed438668d0a9172422(同書)

実験の結果は、高齢者はこの「テレノイド」での通信(会話)を好み、「生身の人間(実の家族)以上に親しみやすい」と評価する傾向が如実にあらわれた」ようである。

「テレノイドを通じての対話なら、家族が内心抱いている『親の世話をするのは面倒くさい』という雰囲気や不安が顔に出ることもなく、それが親に直接的に伝わることもない。だから高齢者は『テレノイドと話すほうが快適だ」と言うのである。」(同書)というのである。

高齢者向け以外でも、テレノイドを使ったカウンセリングは、人間同士が対面するよりも有効であり、就職や転職のジョブマッチングでも随分と役立ち、活用されているとのことである。

プロモーションビデオがYouTubeにアップされているので、ご覧になっていただきたい。

石黒先生いわく、ロボットの研究は人間そのものの研究である。
ロボットには心が無いといわれるが、「「心とは観察する側の問題である。」「心とは、複雑に動くものに実体的にあるというより、その動きを見ている側が想像しているものなのだ。」
「心はプログラミングできる。『心があるように見える』複雑な動きをプログラムすれば、ひとはロボットに心を感じる」と石黒教授は言う(同書)

ここまで来れば、もう「哲学」の領域であり、私自身も少し混乱しかかっている。

「こんなもの流行るはずはない」という声の方が大きかった「スマホ」は、3、4年の間に世界中に広まり、世の中を変えてしまった。
半導体集積回路の素子数は18ヶ月ごとに倍になるという、ムーアの法則が今も行き続けており、コンピュータの脳力の進化とともに、ロボットも進化し我々の生活の中に溶け込んでいくような気がする。

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