現在の自動車業界の秩序を根底から覆す破壊力を秘めているのが、「走る楽しみがない、無人で動く乗り物」とも揶揄されることもある「グーグルカー」です。
グーグルが目指しているのは、最短で2017年に自動運転車を実用化することで、構想が実現すると、自動車メーカーのビジネスモデルは、根底から覆されます。
一人ひとりがクルマを所有することを前提とし、かなりの土地が駐車場として使われている多くの都市の現状をみると、現在の自動車産業は非効率だといえます。
車をシェアするのが前提であれば、消費者はクルマを購入せず、使うときにサービス料を支払うだけで済むようになります。
衛星から地上を撮影した動画を25cm程度に高め解析する技術が近い将来開発され、リアルタイムで車両の数や動きを認識できるようになるといわれています。そうなれば、車両に加えて人の動きまでリアルタイムに判別でき、渋滞や人通りの多い場所を避けて、グーグルカーの進路を決められるようになるのです。
グーグルで自動運転車の開発責任者を務めるクリス・アームソン氏は、「2~3年以内、遅くとも5年以内に一般の人が公道を無人で走る自動運転車を使えるだろう」と話しています。
しかし、実用化には大きな課題が横たわっています。
最大の課題が法律面です。世界中の自動車関連の法律は「運転者主権」に基づいているため、クルマを運転する主体は人間の運転者で、事故が起きた場合の責任も原則として運転者が負うという考え方です。
無人で走行できる完全自動運転車は、この原則から逸脱するため、各国の法制度はグーグルカーの存在を想定していません。今後、政府機関や自治体との交渉が不可欠です。
さらに、車両上部に搭載して、周囲360度の状況を的確に検知して自車位置を推定するために使う、グーグルカーの中核となる赤外線レーザースキャナーの製造コストの高さも大きな課題です。
また、製造メーカーがいないことも指摘されています。
グーグル自らが車両を製造する意思がないことを、公の場で強調し、米ビッグスリーを含む
大手とも交渉しているようですが、色よい返事が得られていないようです。
これら、自動運転自動車に大きな課題が横たわるなか、大きな多くの自動車メーカーは、複数の運転支援システムを搭載してドライバーの負担を軽減する「半自動運転車」の開発を志向しています。
グーグルが先頭を切って開発を進める「グーグルカー」、自動車産業の勢力図が大きく塗り替えられるかもしれないこの開発から目をがそらせられません。
(参考 日経ビジネス2015.4.27号、5.4号)