カテゴリー別アーカイブ:

「大金持ち」の税逃れ監視 国税局に専門チーム

「大金持ち」の課税について、今の国税庁・国税局の管理・調査体制はまだまだ「大金持ち」の現状に追いついていっていない、と常々思っていました。

私たち普通の日本人、税法でいう「居住者」には、日本の税法(所得税法・相続税法など)が適用されます。でも、税法は完璧ではありません。

そして、課税する側(課税庁=国税庁・国税局)が把握できる情報(資料)は、基本的に国内にあるもので、海外にある資産などについては、非常に限られたものであるといえます。

新聞の記事にあるように、今年の所得税の確定申告から、『国外に5千万円超の財産を持つ人に「国外財産調書」を提出させる制度』をを運用するなど、海外資産について、一定のハードルを設けています。

でも、国内と国外では、国税の調査権の及ぶ効力は歴然として異なります。
今後、課税庁(国税庁・国税局)のこのような動きには目が離せません。

共同の本日の記事を添付します

—————————————————————————————————-

国税庁は、富裕層の中でも特に所得や資産が多い「超富裕層」の課税逃れを監視するため、7月に情報収集の専門チームを東京、大阪の両国税局に発足させた。通常は税目ごとに担当部署が分かれているが、チームでは横断的に情報を把握。資産状況やキャッシュフローなどの情報を複数年かけて集める。

国税庁は、国外に5千万円超の財産を持つ人に「国外財産調書」を提出させる制度を始めたばかり。林信光長官は7月の就任会見で「富裕層は資産運用が多様で、国外で運用しているケースも多い。的確に課税し国民の負託に応えたい」としており、今後の取り組みが注目される。

国税庁は税務調査への影響を理由に「超富裕層」の定義を明らかにしていないが、関係者によると、国内外に数十億円規模の資産を持つ人が対象になるとみられる。東京国税局は、課税の基本方針を決める「課税総括課」にプロジェクトチームを設け、7人を配置。大阪国税局も5人で構成する「超富裕層対応チーム」を設けた。

名古屋国税局は専従の職員はいないが、各部署の担当者による協議の場を設けた。

これまで各国税局は、所得税は「個人課税課」、相続税は「資産課税課」など部署ごとに情報を集めており、小まめに連携することは少なかった。また、すぐに税務調査に役立つ情報が重視される傾向もあったという。

専門チームでは、超富裕層の場合、遺産相続の際に他の納税者より多額の税金が発生する可能性を考慮し、複数年かけて資産などの情報を収集。相続時に外国に所有する不動産を申告しないなど国際的な課税逃れも問題化する中、蓄積したデータを税務調査に生かす。

昨年6月までの1年間に実施した所得税に関する税務調査では、富裕層に限ると、申告漏れなどがあった場合の1件当たりの追徴税額は244万円で、富裕層以外も含めた1件当たりの約1・7倍に上った。所得が高い人は税率も高く、税収への影響も大きいことから、専門チームは課税逃れに目を光らせる。 (共同)

税源浸食

米国のアップルやスターバックスなどが法人税率などの低い国に所得を移転して納税額を減らしていた問題が大きくクローズアップされています。

OECDの租税委員会が一昨年よりBEPS(税源侵食と利益移転)に対する取り組みを開始、昨年のG7の財務大臣・中央銀行総裁等会議でも議論になりました。

そして、昨年7月には、OECDとG20の合同プロジェクトとして「BEPS行動計画」が公表され、今年9月には、第1段の勧告が出されることとなっています。

背景にあるのが、アップルやスターバックスが、ほとんど法人税を払っていないということです。高額な報酬を払って弁護士を雇い、世界各国の税の制度を研究しつくし、どこの国にどのように子会社を設置すれば企業体として税負担が少なくてすむかというスキームを考え実行しているのです。そして、その一つがDIDSというスキームです。

DIDSとは、「ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ」を略したものです。親会社は米国にありながら、アイルランドに子会社を2つ設立、その2つの子会社との取引の間にオランダ子会社をかますというもの。

私は最初聞いた時は何のことかさっぱり理解ができませんでした。それでも、少し内容を知ると、よくもこんなスキームを考え出したものだと呆れるばかりです。

その点、日本の法人は、このような規模で節税スキームを組むことはあまりなく、それなりの納税義務を果たしていると思います(法人税をほとんど支払っていない法人があるのは事実ですが、これらスキームを駆使するのとは別次元の話です)。

今や税は、国境を飛び越して世界各国財政税務当局と企業との知恵比べの段階になっています。

9月に出される勧告の内容で、日本の税制も大きく影響を受けることが予測されます。
今後の動きに目が離せません。

 

DIDSinternational_201401-01

BEPSスキームの概要 太陽ASG 国際税務ニュースレター(2014.1)より

 

税制改正の行方(野田毅自民党税制調査会長講演)

今日の午後は、自由民主党税制調査会長の野田毅衆議院議員の講演を聴きました。

近畿税理士会と近畿税理士政治連盟の共催の研修で、「今後の税制改正の行方」ということで、今、税制調査会で今議論され検討され、またこれから検討されるであろう論点などについて、生々しいお話が聴けました。

野田議員は、大阪で小学校から高校まで 大阪で過ごされ、枚方市立第一中学校、大阪府立寝屋川高等学校を出られています。東京大学法学部を卒業後、大蔵省に入省され、8年余りの勤務の内5年間を国税関係の仕事をされ、税に対しては非常に詳しい方です。

現在、自由民主党の税制調査会長の重責を担っておられ、現在同調査会で検討議論されている事柄やについて、ご自身が財務省の担当に指示して作らせた資料を基に、歳出の内容の分析や、社会保障給付費と財政の関係について非常に興味深いお話をしていただきました。

財務省は、財政を立て直すという大命題から、財務省にとって都合の良くない資料は出さないようで、野田議員が特に指示して作成された資料は興味深いものでした。

ポイントは、

① 日本は付加価値税(消費税)率が低い割に社会保障支出(対GDP比)割合が高い。

② 社会保障費を除く政府支出の割合(対GDP比)はOECD国内では一番小さい。 → 歳出削減を言い続けているがもうギリギリのところまできているのではないか?

③ 国債等の残高がGDPの2倍まで膨らんでいるが、低金利政策のため利払い費が少なくて済み、現状何とか回っているが、金利が上昇すると危険な状況になる。 → 金利が上昇するとアベノミクスは崩壊する危険性がある。

④ 日本の高齢化の進展は世界の中で突出しており、消費税の8%へのアップはまだ道半ばで10%でやっと一歩前進といったところ。それでもまだ一歩であり、今のままだと税率も上がらざるを(30%?)えない?

⑤ 複数税率の話が10%アップ時とともに議論されているが、複数税率は運用が困難と認識。今後税制調査会でヒアリングを重ねながら議論を進めていきたい。

とのことでした。

noda_photo1

資料は、一人でも多くの国民の皆様に見ていただきたいとのことでしたので、添付いたします。

2 OECD諸国における政府の財政規模の比較

5 利払費と金利の推移

6 公的部門職員数の国際比較

7 高齢化の現状

8 社会保障給付費と財政の関係

国際税務の変化

先日、6月19日(木)と6月20日(金)の2回にわたって、国際税務研究会の研修に参加いたしました。
講師は、国税庁の審理室の秋元課長補佐、そして国税庁調査査察部の山川博樹調査課長でした。
タックス・ヘイブン税制、移転価格税制分野での執行を巡る状況や課題、その他、最近の動向として、BEPS行動計画や平成26年度税制改正において導入された外国法人課税をAOAに基づく帰属主義に変更された点など国際課税全般について幅広く説明がありました。

移転価格調査では、平成23年の国税通則法の改正により、納税者の方の同意があれば、通常の法人税調査と移転価格調査が区分して行えるようになったことを受け、調査対応の負担軽減のためにも、改めて、移転価格調査前の事前通知への同意を社内で検討いただきたいとの話がありました。また、移転価格文書化においても、現在、BEPS行動計画13において取り上げられていることを受け、OECDを中心に議論が進展中であることが説明されました。
現在国際課税の現場で世界の多くの国の税務関係者が政治をも巻き込んで議論されている生々しい話で、非常に興味深く、勉強になりましたが、如何せん最先端の話で、理解できない部分も多々あり、復習をしつつ、少しでも理解できるよう努力しているところです。